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700億ドルの円買い介入:ワシントンは日本の米国債売却を阻止できるのか?

When the world's largest foreign creditor starts selling its U.S. bond holdings to prop up its currency, two governments are forced into the same room. The Treasury Secretary's flight to Tokyo this week is proof.
May 17, 2026

世界最大の対外債権国が自国通貨を守るために米国債の売却に動き始めた、その瞬間、2つの政府は交渉の席につかざるを得なくなる。今週の米財務長官による東京訪問は、まさにその現実を物語っている。

87億ドルが示す異変

5月6日終了週のFRBカストディデータに、見逃せない動きが現れた。海外政府・中央銀行が保有する米国債残高が87億ドル減少し、2兆7300億ドルとなったのだ。1カ月ぶりの減少であり、そのタイミングは決して偶然ではない。

同じ週、日本の財務省は約547億ドルを投じて円買い介入に踏み切り、USD/JPYを160水準から引き戻したとみられている。円相場は数時間のうちに160台から151台まで急騰し、その後155〜156付近で落ち着いた。

5月6日に日本政府による市場介入が疑われた後、USD/JPYが急落し、高いボラティリティを示した5日間チャート。(出典:TradingView)

実際の規模はさらに大きい

FRBのカストディデータが示す87億ドルの減少は、米国債市場への実際の影響をかなり過小評価している可能性が高い。バンク・オブ・アメリカ東京拠点のストラテジスト、山田修介氏は、過去の介入局面を振り返ると、日本の外貨準備における現金部分はさほど減少しない傾向があると指摘する。この構成ロジックが今回も当てはまるなら、売却圧力を吸収したのは証券部分、すなわち米国債であり、その規模は700億ドル近くに達する可能性がある。

これが「非不胎化介入」の実態だ。円を買い、ドルを売り、米国債を換金する。そして、その資金は市場に還流しない。

売り手は「3者」ではなく「2者」

現在の米国債市場が直面している供給圧力は、大きく2つある。

ひとつは、財政赤字を賄うための米財務省による国債発行だ。第2四半期の月間純発行額は約630億ドル、第3四半期の借入需要は6710億ドルへ上方修正されている。

もうひとつは、日本による介入目的とみられる資産売却だ。5月初旬だけで約350億ドルが投入され、山田氏のロジックが正しければ、市場への実際のインパクトは700億ドル規模に達する可能性がある。

一部では、FRBによる量的引き締め(QT)も加えた「3つの売り手」論が語られることもある。しかし、QTは2025年12月1日にすでに終了している。FRBは保有資産の圧縮を止めただけでなく、現在は「Reserve Management Purchases」を通じて月約250億ドルの短期国債を購入し、銀行準備金の安定を図っている。つまりFRBは今や、供給圧力ではなく需要の支え手に回っているのだ。

ナショナル・オーストラリア銀行のシニアFXストラテジスト、ロドリゴ・カトリル氏はこう述べる。「この口座の動きは、財務省が日銀に介入を指示したタイミングと重なっているように見える。これが常態化すれば、米国債市場にとって深刻な問題になりかねない。」

なぜ「160」が防衛ラインなのか

USD/JPYが160を超えると、日本では輸入インフレが政治的に耐えがたい水準に達する。エネルギー、食品、原材料の価格が一斉に跳ね上がり、日銀の0.75%という政策金利は、FRBの3.50〜3.75%との乖離を前に、もはや維持が困難に見えてくる

しかし、介入だけでこの金利差を埋めることはできない。

Monex Groupのイェスパー・コール氏は、この状況を鋭く言い表した。「金融政策を変えずに介入するのは、アクセルを全開にしながら軽くブレーキを踏むようなものだ。うまくいっても乗客がちょっとした刺激を楽しむだけ。最悪の場合、ブレーキパッドを焼き切ることになる。」

日本はゴールデンウィーク中の4月30日と5月6日の2度にわたって介入を実施し、推定350億ドルを投入した。円は一時反発したが、その後は再び下落。低金利の円を借りて高利回り資産に投資する「キャリートレード」は、2021年初頭と比べて依然として約50%高い水準にあり、ファンダメンタルズの是正は起きていない。

ベッセント訪日:本当の交渉議題

米財務長官スコット・ベッセント氏は5月12日に東京へ向かった。その胸中には、2つの重大な問いがある。

第一は、介入コストの問題だ。 日本は流動性の薄いゴールデンウィーク中に、160防衛のために約350億ドルを投じた。市場では、その資金が米国債売却によって調達されたと見ている。これは非不胎化介入であり、すでに大量発行を吸収しているところに恒久的な売り圧力を加えることを意味する。ベッセント氏が知りたいのは、これが緊急の一時対応なのか、それとも東京が常態的な介入スキームを構築しようとしているのか、という点だ。

第二は、金利政策のジレンマだ。 日銀は4月に1.0%への利上げを議論したが、3名の委員が反対票を投じた。より積極的な引き締めは自然に円を支え、介入の必要性を減らす。しかし円高はドル安を意味し、現政権はドル高を志向している。ベッセント氏のメッセージが明らかにするのは、ワシントンが本当に望んでいる選択肢、日銀利上げ(米国債売却の減少)か、財務省介入(売却の継続)かだ。

市場の読み方はシンプルだ。協調シグナルが出れば、円は安定し、ショートの買い戻しが進み、市場の信頼が回復する。反対に、摩擦の兆候や利上げを抑制する圧力が示されれば、USD/JPYは再び160を試し、財務省はさらに外貨準備を消費し、米国債の供給問題は一段と深刻化する。

700億ドル、繰り返すリスク:ベッセントの東京行きが決める「次の一手」

日本による米国債売却疑惑は、世界の基準債券市場における供給ショックだ。その根底にある通貨防衛は、FRBの協調か日銀のタカ派転換がなければ、構造的に成立しない。

700億ドルは一度限りの問題ではない。USD/JPYが再び160を突破し、財務省が同じ対応を繰り返せば、それは何度でも起きるリスクとなる。

ベッセント氏の東京訪問は、この緊張関係を管理する最初の試みだ。彼が発するシグナル、協調か摩擦かが、この問題が限られた二国間の出来事に収まるのか、それとも米国債市場の構造的ストレスへと発展するのかを左右する。

円相場、米国債利回り、そして日本資産への資本フローにとって、今この瞬間に意味を持つのは、そのシグナルだけだ。

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